第2回聖骸布研究会報告      


01年11月17日、調布サレジオ神学院研修室で開催、卒論のテーマに聖骸布を選
んだ女子大生など約20名の熱心な会員、研究者が参加しました。 当日の講演要旨
をご紹介します。

1 「聖骸布の3次元立体像の作成」
本会会員、元北海道大学教授、工学博士 竹村伸一氏

*聖骸布とのなれそめ
いまから15年程前、札幌でコンプリ神父様の話を伺い、こんなものが世の中にある
のかと非常に驚きました。その後、何かの機会に、アメリカ、NASAの2人の若い技術
者が、聖骸布の立体像を絵にしたとのニュースを聞きました。わたしは、当時、北大
の教授をしていて、コンピュータ・グラフィックス(CG)の研究をしていましたの
で、大変興味を覚えました。それから時が経ち、去年(2000年8月)、家内と共にトリノ
へ聖骸布を見に行き、こころを打たれました。
帰ってから、神父さんとお話しましたところ、わたしの立体像の研究を取りまとめて
イタリアの国際聖骸布研究センターへ送るための英文の報告書を作成するように言わ
れました。
*聖骸布はどうしてできたか
一般的に考えて、3通りの可能性が考えられます。
@ 奇跡でできた。体内でエネルギー爆発があったかで、人間の形が写ったとする
説。これは、科学者が信用するはずがありません。
A 布と体の接触でできた。香料、汗、体液などにより像ができたという説。聖骸布
の人物像の変色の厚さは0.05mmしかなく、また付着物もないので、単なる接触による
可能性は薄いようです。また手書きによる画像も広い意味で接触ですが、絵の具の跡
がないということ、および、人物像が「ネガ」であるということから問題が残ります。
B 非接触説。たとえば、布が静電気を帯びているところに、弱い放射線が当たり、静
電気の分布が変わって像ができる場合です。ゼロックスなど、乾式複写機の仕組みは
これに似ています。
*立体像のヒント
Bのケースを想定すると、ゼロックスで出てきた紙の黒さを調べたとき、凹凸が浮か
んでくるのではないか。つまり、鼻のあたまなど高いところと目のくぼみなど低いと
ころでは黒さの差が出て凹凸が浮かんでくるのではないかということです。
NASAの技術者の作った立体像は、聖骸布の濃淡を高さ、低さに置き換えてパラメー
ターをかなり大雑把に決めて描いたものです。


*聖骸布の人物像の特徴
聖骸布をCGとして処理するに当たっては、難点が2つあります。
第1は、ノイズが多いことです。すなわち、本来の人物像である「シグナル」の部分
に対して、焼け焦げや継ぎ当てなど「ノイズ」の部分が多いことです。ノイズを取る
方法はコンピュータではいろいろありますが、残念なことにノイズ処理をすると肝心
なシグナルの方が弱くなり、平滑化されてしまいます。
第2の難点は、ダイナミックレンジが狭いことです。つまり、色の濃いと薄いの差が
あまりないのです。その結果、変換比率というものの選び方によって絵が大きく変
わってしまいます。

正面 横顔

*CG立体像の作成
これらの難問にぶつかりながら何十本かのプログラムを作り、たくさんの絵を描いて
いるうちに、この像はわたしが永年研究しているバンプ・マッピング(BM)という
CGの技法のソース・ピクチュアに似ていることに気が付きました。しかし、BMは
物体の表面の凹凸をあらわす技法ですが、3次元の立体データ全体を表してはいない
のです。
3次元の絵を描くためには、X.Y.Z軸の値が必要です。X.Yは聖骸布が与えて
くれますが、Z軸の値は上記の表面凹凸しかわからないので不足部分を与えてやらな
ければ立体像ができません。像の濃淡より表面的な像の高低を求め、さらにこれに、古
代の大理石像などに残っている大きな高低データで補って完全な3次元データを完成
しました。
このデータを用いてCGによる聖骸布の3次元立体像を作成しました。できてしまえ
ば、左右どちらからでもいろいろな角度の横顔をみることができます.また、すこし
ずつ違う像を連続して表現しアニメーションも作成しました。

(注) 当日のご講演の前半では、聖骸布について、わかりやすい概説がありました
が、ここでは省略しました。