(12) 日本のマナーを学ぶ

1926年3月5日 宮崎から
Caviglia Alberto カヴィリア・アルベルト神父へ

カヴィリア神父は、ドン・ボスコの有名な研究家で、トリノの聖ヨハネ支部で一緒に働いた同僚また先輩である。Tonelliトネリ神父は一緒に叙階され、自然科学の教諭、博物館の館長、チマッティ神父から多くの標本を送ってもらった親友である。

親愛なるカヴィリア神父様、

トネリ神父に送った箱の中に、あなたのために多くの「人称代名詞」を入れました。〔注.日本のお茶はイタリア語で “te`”と言う。「あなた」という「人称代名詞」の意味でもある〕。届いたでしょうか。自分の手で摘んだのだから、本物ですよ。(前もって手をよく洗いました!)。役立てば、嬉しいです。そうでないならば、日本には美味しいお茶がないということになります。

でも、私は好きではありません。砂糖なしで出すのですから。初めに味わったのは、上海で中国の茶を飲んだ時でした。Lo Pa Honの夕食で、一口ずつ12品のものが出た後、お茶が出ました。断ることはできませんでしたが、ピアノを弾いたのち、皆が感激したためか、またお茶が出ました。いくら断っても、飲まざるをえませんでした。宮崎に着いてから(きれいで、静かな町ですよ!)知事を訪問したら、待合室でまたお茶が出ました。終わりだと思ったら、知事はもう一度入れさせてくれました。慣れるために、砂糖なしでも変な口をしながら飲み込んでしまいました。

親愛なるカヴィリア神父さま、本に書いてある日本のこの小さい人たちについての、特に話すときや振舞うときの遠慮深さと丁寧さは、読んでは信じられませんでしたが、ここに来てみたら、本当に大変なことです。訪問する時、こうなります(これは、医者を訪問した時の実話です)。まず、靴を脱ぐ(私のような紐靴の場合、不幸だなあ!)。入口に女中が深い辞儀をして勧めるスリッパを履いて、中に入る。病人を診察する医師がご婦人を紹介したいのですから、探しに行く間、スリッパを脱ぎ、部屋に入って(靴下がきれいであることに注意!)、待っている間、女中は座布団を敷く。医者が入り、ひざまずいて3回お辞儀をして、挨拶が始まる。

こんにちは、とお辞儀して彼は言う。
こんにちは、とお辞儀してお客は答える。
今日、いい天気ですね(あるいは、悪い天気ですね)、とお辞儀してまた彼は言う。
はい、とてもいい天気ですね(あるいは、残念ですね!)、とお辞儀してお客は答える。
お元気ですか、とお辞儀して彼は言う。
まあ、まあ(あるいは、とても元気です)、とお辞儀して私は答える。
どうぞ、お座りください、と彼は言う。

そのとき、客は丁寧に50センチ四方の座布団の上に座る。正式な座り方は、ひざまずいて、組んだかかとの上に座ること。痛くてたまらない。そのまましゃべりだす。調子に乗ったとき、貴婦人が入って来る...また初めからの挨拶が始まる。おもしろい世界ですよ!

終わったら、出口まで案内されて、またスリッパを履ぎ、それを脱ぎ、靴を履く。先生は、ヨーロッパの靴を履く苦労を見ながら微笑んで見てくれる。

もう十分! イタリアに帰ったら、話すことはたくさんある! 日本は、すべての面で美しい。この季節は、咲いているつばき、梅、あんず、桜は素晴らしいです。その後は、どうなるかをみましょう。気候は、今のところ、ピエモンテ地方に似ています。

整頓、清掃は行き届いていて、人々は細かいところまで気付きます...まあ、結構です。子供たちはもう近づいてきます。聖ヨゼフの祝いと復活祭のため、歌わせるつもりです。声は悪くない。遊び、音楽、演劇に夢中です。全世界の子供たちは、どこでも同じです。

今のところ、神のお導きにより、とても希望がもてます。

しかし、まず言葉の問題を解決しないといきません。

心から抱きしめます。尊敬を持って チマッティ神父